2017425

 

復興大臣 今村雅弘 様

           

          福島第一原発事故・損害賠償愛媛訴訟原告有志

        福島原発事故避難者裁判を支える会・えひめ

 

    避難者を深く傷つける今村雅弘復興大臣の発言への抗議および辞任の要求について

 

 今村復興大臣、私たちはあなたに抗議します。今すぐ、大臣を辞任してください。

 

 去る312日、今村大臣はNHKの討論番組の中で、原発事故の自主避難者に対し、「故郷を捨てるっていうのは簡単ですよ」、「そうじゃなくて、とにかく頑張っていくんだという気持ちを持ってもらいたい」という発言をしました。また今月4日、今村大臣は記者会見の場で、自主避難者が福島に帰れないのは、「本人の責任でしょう、本人の判断でしょう」との発言をし、「裁判でも何でもやればいい」との発言をしました。

 これらの発言は、見過ごせない言葉であり、謝って終わりにさせるわけにはいきません。

 

 国は「毎年1ミリシーベルト以上の被曝を国民にはさせない」と決めていました。ならば、それに該当する地域やそれを恐れる人々が避難することは当然のことです。しかし国は、福島県には、子どもにまで年間20ミリシーベルトという、原発など放射線管理区域で働く作業員と同じ許容量を課し続けています。今村大臣は放射線被曝について、どこまで知っているのでしょうか。「低線量であれば、被害など生じない」、私たちは皆、そうあって欲しいと願っています。しかし、私たちが調べた限りでは、低線量被曝について、その詳細を科学的根拠を持って示せる者は、この地球上には誰もいないのです。だからこそ私たちはこの年間、避難を続けるか、帰還をするかで悩み、苦しみ、もがいてきたのです。

 

 もし、今村大臣が私たちへの責任を感じて、事態の深刻さを謙虚に受け止め、私たち避難者の健康と命、そして未来をどうすれば守れるのかで頭を悩ますなら、国会議員として勿論、大臣としての素養も感じ取れます。しかし、今村大臣が見せた記者会見。あの姿が、今村大臣の隠しきれない本性なのでしょう。

 

,「故郷を捨てるっていうのは簡単ですよ」

 私たち避難者は、ふるさとを愛しています。帰還できるのであれば、今の生活すべてを捨ててでもすぐに帰還する。それが私たち避難者です。しかし、今はまだ帰還を出来ずにいるのです。たとえ低線量であっても放射線被曝の不安は払拭できません。自分自身や家族の『健康と命、未来を守るために』という思いで、避難を継続しているのです。

 今村大臣、私たちは、ふるさとを捨てるために避難を継続しているのではありません。

 

「本人の責任でしょう、本人の判断でしょう」

 元の地に帰還するか否かに関して、私たち避難者は、自らの判断に対して逃れられない責任を負っていると認識しています。私たちは、避難を選択した事で、元の地の復興・まちづくりに参加できないもどかしさや福島から逃げ出してきた罪悪感に苛まれています。そして、家族離散・コミュニティーの崩壊・経済的困窮・精神的ストレスの増大など、家族もろとも様々な苦難に直面しています。

 今村大臣、そもそも私たちをこのような状況に追い込んだ原因は何ですか。国は、原子力政策を推進し、原発事故を発生させてしまったのです。この責任から逃れることはできません。国は、原発事故子ども・被災者支援法の条文にある『原子力災害から国民の生命、身体及び財産を保護すべき責任』を真摯に果たさなくてはなりません。

 

,「裁判でも何でもやればいい」

 私たちは、国と東京電力を訴える裁判を行っています。しかし、やりたくて始めた裁判ではありません。私たち避難者は、多くの苦しみと怒りの声をあげました。例えば、「経済的にとても苦しい」、「家族みんなで暮らしたい」、「期待しても絶望だけ」、「国に避難する権利を認めてほしい」、「もっと真摯に向き合ってほしい」、「3.11の原発事故の真相を言ってほしい」、「国は守ってなんかくれない」、「やはり黙ってはいられない」などです。「苦しい生活から早く抜け出したい」という私たち避難者の切実な願いに、責任を負うべき国が応じてくれず、私たちは為す術なく提訴に至ったのです。

 

福島第一原発事故の収束には、あと何年かかるのでしょう。数十年、数百年、もしかしたら数千年、どれ程の年月が必要になるのか誰も分からないのではないでしょうか。この原発事故は、質・量ともに人類が未だかつて経験した事のないものです。収束にかかる費用もどこまで膨らむのか、被害もどこまで拡大するのか、分からないことばかりなのです。もし裁判所が、国の政策を斟酌して、原発事故から何も学ばない判断を出すなら、日本は行方を誤り、私たち国民は、最悪、この日本を失う事にも繋がると危惧しています。 

 

私たちは、裁判を通じて「避難する権利を確立」し、避難した人も、残った人も、帰還した人も、みんな等しく、原発事故前の「普通の暮らし」を取り戻す事、そして、「事故原因と国の責任を究明」し、この地球上で二度と原発事故の被害を繰り返させない事を社会に訴えています。

 

今村大臣、「裁判でも何でもやればいい」という言葉の投げ捨ては、私たち避難者の感情を逆撫でするものです。私たちを突き放し、何を復興させようとしているのでしょうか。

 

 すでに今村大臣のもとには、原発事故避難の当事者団体や支援者団体等関係諸団体によって、多数の抗議や辞任要求の声が寄せられている所であると思います。私たちはこれまで、今村大臣自らが過ちに気付き、辞任を決めるものと静観しておりました。しかし、未だに復興大臣の職にしがみ付いておられます。

 

 復興大臣は私たちの大臣です。私たち避難者は、私たちと同じ目線に立ち、共に悩み苦しみ、共に歩んでくれようと努力する復興大臣を心から望みます。

 

今村復興大臣、あなたのような方に復興大臣でいて欲しくはありません。即刻、大臣を辞任する事を要求します。